最終更新:2026-08-23

📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。

アルバイトに出張買取へ行ってもらう。スタッフに古物市場へ行ってもらう。イベント出店を任せる。——このとき、その人に持たせなければならないものがあります。行商従業者証です。

ところがこの書類、警察に申請して交付を受けるものではありません。そして持たせなかった場合には罰則があるのに、求められて出さなかった場合には罰条がありません。順に見ていきます。

持つ人によって、持つものが違います

古物営業法第11条は3つの項に分かれていて、それぞれ主語が違います。

1 古物商は、行商をし、又は競り売りをするときは、許可証を携帯していなければならない。
2 古物商は、その代理人、使用人その他の従業者(以下「代理人等」という。)に行商をさせるときは、当該代理人等に、国家公安委員会規則で定める様式の行商従業者証を携帯させなければならない。
3 古物商又はその代理人等は、行商をする場合において、取引の相手方から許可証又は前項の行商従業者証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。
(古物営業法 第11条)

誰が持つもの根拠
古物商本人許可証法11条1項
代理人・使用人その他の従業者
(アルバイト・パートを含みます)
行商従業者証法11条2項

従業者に許可証を持たせるのではありません。許可証は本人が携帯するものです。従業者には、別に用意した行商従業者証を持たせます。

なお「行商」は営業所以外の場所で取引することを指し、出張買取・イベント出店のほか古物市場への参加も含みます。行商の範囲はURL届出と行商で整理しています。

警察に申請して交付を受けるものではありません

ここがいちばん誤解されます。行商従業者証は、古物商が自分で用意して従業者に持たせるものです。

法第11条第2項が言っているのは「国家公安委員会規則で定める様式の行商従業者証を携帯させなければならない」だけです。そして、その様式を定めているのが施行規則第10条です。

法第十一条第二項の国家公安委員会規則で定める様式は、別記様式第十二号又は第十二条第一項の規定による承認を受けた様式とする。
(古物営業法施行規則 第10条)

法にも規則にも、行商従業者証を警察へ申請して交付を受けるという規定はありません。定められているのは様式だけです。許可証(法5条〜7条)や標識(法12条)とは、そこが違います。

ただし、用紙の配布や記載方法の案内は警察署ごとに運用が異なります。「署で用紙をもらえる」「様式を印刷して持ってくれば確認する」といった扱いがある地域もあります。作る前に、営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)へ一度確認してください。

組合などの共通様式が使えることがあります

施行規則第10条の「第十二条第一項の規定による承認を受けた様式」というのは、こういう仕組みです。

国家公安委員会又は公安委員会は、国家公安委員会が定める団体が当該団体の社員、組合員その他の構成員である古物商又は古物市場主に共通して利用させるものとして定めた様式を、国家公安委員会が定めるところにより、法第十一条第二項の行商従業者証又は法第十二条の標識の様式として承認することができる。
(古物営業法施行規則 第12条第1項)

承認された様式は、団体の名称・住所とともに官報で公示されます(同条第2項)。承認が取り消されたときも、同じように公示されます。

つまり、組合や協会に入っていて共通のカードが配られている場合、それが承認された様式であれば、そのまま行商従業者証として使えます。逆に、承認されていない「社員証」では要件を満たしません。使えるかどうかは、承認の有無で決まります。

持たせなかったら10万円。出さなかったことに罰条はありません

罰則は第35条にあります。

次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
 二 第八条第一項、第十一条第一項若しくは第二項又は第十二条の規定に違反した者
(古物営業法 第35条第2号)

並んでいるのは第11条の第1項と第2項です。第3項(提示義務)は入っていません。

義務条文罰則
本人が許可証を携帯する法11条1項第35条第2号
十万円以下の罰金
従業者に行商従業者証を携帯させる法11条2項
相手方に求められて提示する法11条3項罰条なし

同じ形は法15条にもあります。本人確認(15条1項)には罰則があり、不正品の申告(15条3項)には罰則がない。——古物営業法は、項ごとに罰則の有無が変わる法律です。「11条に違反したら罰金」ではなく、「11条の何項か」で決まります。この読み方は盗品かもと思ったらでも使っています。

罰条が無いことは「守らなくてよい」ではありません。提示を拒めば、法23条の指示や法24条の営業停止の判断材料になり得ます。そもそも提示は、相手方に「まっとうな古物商だ」と示すための仕組みです。

なお第35条第2号には第12条(標識の掲示)も並んでいます。行商従業者証と標識は、同じ重さの義務ということです。標識のほうは古物台帳とプレートにまとめています。

従業者の違反は、古物商本人に返ってきます

第11条第2項をもう一度見てください。義務を負っているのは「古物商は……携帯させなければならない」——従業者ではなく、古物商本人です。持たせるところまでが義務です。

そのうえで、古物営業法には両罰規定があります。

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人等が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第三十一条から第三十五条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
(古物営業法 第38条)

第35条は範囲に入っています。法人だけの話ではありません。条文は「法人若しくは」と書いているので、個人事業主でも同じです。

さらに、指示(法23条)と営業停止・許可の取消し(法24条)は、どちらも「古物商若しくは古物市場主若しくはこれらの代理人等が……違反した場合」を要件に置いています。従業者がやったことは、古物商の処分の判断材料になります。

拘禁刑と罰金の併科(法36条)は、第31条から第33条までが対象です。第35条は入っていないので、行商従業者証まわりの罰は罰金だけです。とはいえ、行為者と事業主の両方に科され得る点は変わりません。

そもそも「行商する」で許可を取っていますか

許可申請書には「行商をしようとする者であるかどうかの別」を書く欄があります(法5条1項5号)。ここを「行商しない」で出していると、営業所以外の場所での取引ができません。行商従業者証の前の話です。

出張買取・イベント出店・古物市場への参加を予定しているなら、「行商する」で申請してください。すでに「しない」で許可を受けている場合は、変更届で直します(有効期限・変更届)。

従業者に行かせる前に、確認すること

様式の記載方法、用紙の入手、辞めた従業者からの回収の扱いなどは、都道府県や管轄の警察署によって案内が異なることがあります。迷ったら自分で決めず、営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)へご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案への判断を保証するものではありません。

参照した一次情報

許可を取ったあとに続く義務を、まとめて確認する

行商従業者証のほかにも、標識・台帳・本人確認・品触れ・変更届など、営業を続けるかぎり続く手続きがあります。

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