最終更新:2026-07-30
📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。
「催事場に出店が決まったので、その場で買取もやろう」——古物商許可を取った方から、この時期よくいただくご相談です。ここで多いのが、「行商する」の許可を受けているから催事場でも買い取れる、という思い込みです。残念ながら、それだけでは足りません。営業する日の3日前までに「仮設店舗営業届出」を出しておく必要があります。出店が決まってから慌てないよう、順を追ってご説明します。
「行商する」の許可だけでは、催事場で買い取れません
古物営業法には「営業の制限」という規定があります。第14条第1項は、古物商が古物商以外の方から古物を受け取ってよい場所を、次の2つに限定しています。
- 自分の営業所
- 取引の相手方の住所または居所
買い受けるため、交換するため、あるいは売却・交換の委託を受けるために古物を受け取る行為が対象です。つまり催事場のブースやフリーマーケットの会場は、どちらにも当たりません。「行商する」の許可は営業所の外で営業できるという記載にすぎず、受け取る場所の制限を外してくれるものではないのです。ここが誤解の生まれるところです。
ただし同じ第14条第1項には、ただし書きがあります。あらかじめその日時と場所を、場所を管轄する公安委員会に届け出た仮設店舗であれば、受け取ってよいという例外です。この届出が、仮設店舗営業届出です。
届出をせずに仮設店舗で買い取ると、第14条第1項違反となり、第32条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。古物営業法の義務違反のなかでも重いほうの法定刑です。届出は無料で、書類は1枚。出さない理由がありません。
※ 2025年6月1日施行の刑法改正で「懲役」は「拘禁刑」に一本化されました。古い解説書には「1年以下の懲役」と書かれていますが、内容としては同じ規定です。
そもそも仮設店舗とは、どんな場所ですか?
警察庁の解釈運用基準では、仮設店舗は「営業所以外の場所に仮に設けられる店舗であって、容易に移転することができるもの」、言いかえれば「その営業の責任の所在場所が固定されていないもの」と説明されています。具体例として挙げられているのは次のような形態です。
- 催事場などに設けるブース
- 車両を駐車して、その場で出店する形態
- 屋台
逆に、継続的な営業のために設けられたものは仮設店舗ではありません。見た目が簡易な造りであっても、そこで継続的に営業するのであれば「営業所」として扱われ、営業所の届出(変更届出)の対象になります。プレハブや常設のワゴンで毎日同じ場所で営業するようなケースは、仮設店舗営業届出ではなく営業所の追加として整理することになりますので、迷ったら管轄の警察署に確認してください。
なお、少し意外な取り扱いとして、古物を売却する機能だけを持つ自動販売機も仮設店舗にあたるとされています。この場合は許可申請の段階で「行商する」の記載が必須になり、機械ごとに標識を掲示する必要があります。
届出はいつ、どこへ出しますか?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 仮設店舗で古物営業を営む日の3日前まで |
| 提出先 | 仮設店舗を出す場所を管轄する警察署(生活安全課・防犯係)を経由して公安委員会へ |
| 県外に出店する場合 | その都道府県に営業所がないときは、営業所の所在地を管轄する警察署を経由して届け出ることができます(第14条第2項) |
| 様式 | 古物営業法施行規則 別記様式第14号の2(仮設店舗営業届出書) |
| 記載事項 | 営業を行う日時と場所など |
| 手数料 | かかりません |
| 添付書類 | 原則として不要(管轄により運用が異なる場合があります) |
気をつけたいのは「3日前」の数え方です。警察署の窓口は平日の日中しか開いていないので、土日祝日が挟まると実質的な余裕はもっと短くなります。金曜・土曜・日曜に開催されるイベントは特に危ないところです。出店が決まった時点で出すくらいの気持ちで動くのが安全です。
複数日にわたるイベントや、複数の会場をまわる場合は、会場ごと・日程ごとに届出が必要になります。管轄が変わればその都度その場所の警察署へ、というのが原則です。まとめて出せるかどうかは運用に幅があるため、スケジュールが固まった段階で相談してみてください。
当日に持っていくもの・掲示するもの
届出を出したら安心、ではありません。仮設店舗でも、営業所と同じ義務がついてまわります。
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標識(プレート)を掲示する
営業所と同じく、公衆の見やすい場所に標識を掲示します。ブースの机の前面など、お客様から見える位置に置いてください。持ち運べるようにしておくのが実務のコツです。
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許可証を携帯する
行商をするときは許可証の携帯が必要です。求められたら提示します。従業員に任せる場合は、その方に行商従業者証を携帯させてください。
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相手方の確認をする
買取をするなら、営業所と同じように相手方の身元確認が必要です。会場ではあわただしくなりがちですが、ここを省くわけにはいきません。
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古物台帳に記録する
いつ・誰から・何を・いくらで買ったかを記録します。会場では控えを取り、営業所の帳簿にまとめる流れにしておくと漏れません。
標識と台帳の具体的な様式や書き方は、古物台帳とプレートのページで詳しく解説しています。
販売だけなら、届出は要りますか?
ここは実務でよく迷うところです。第14条第1項が制限しているのは、「買い受け」「交換」「売却または交換の委託を受ける」ために古物商以外の方から古物を受け取る行為です。そのため、自分の在庫を並べて売るだけであれば、同項の制限にはかからないと整理されます。
ただし、それでも次の点は変わりません。
- 営業所以外での営業なので、許可に「行商する」の記載が必要です
- 許可証の携帯(従業員なら行商従業者証)が必要です
- 標識の掲示が必要です
実際の現場では、販売だけのつもりでも「これ買い取ってもらえますか」と持ち込まれることがあります。その場で受け取れば買取になってしまいますので、少しでも可能性があるなら届出を出しておくのが安全です。無料で1枚の書類ですから、保険として出しておく判断で構いません。
いつからある制度ですか?(2020年の改正と混同しないために)
仮設店舗営業届出は、平成30年(2018年)の古物営業法改正で新設され、平成30年10月24日から施行されています。それ以前は、営業所か相手方の住所・居所以外では古物を受け取れず、催事場での買取ができませんでした。
混同しやすいのが、令和2年(2020年)4月1日施行の改正です。こちらは「主たる営業所等の届出」を出して、都道府県ごとの許可から主たる営業所の所在地の公安委員会の許可へ切り替える、という許可の単位に関する内容で、仮設店舗とは別の話です。同じ2018年公布の法律の中で施行日が分かれているため、解説記事でも取り違えられていることがあります。古物営業法の改正まとめで時系列を整理していますので、あわせてご確認ください。
3日前に間に合わなかったら、どうしますか?
間に合わなかった場合、その会場で買取をすることはできません。そのうえで取れる選択は3つです。
- 販売のみに切り替える(前述のとおり、買取の相談は受け取らない形で断る)
- 取引を相手方の住所・居所で行う(後日、出張買取として訪問する。これは第14条第1項の本文で認められている場所です)
- 出店を見送る
「今回だけだから」「小さなイベントだから」という判断は危険です。罰則が用意されている義務ですし、なにより届出は無料です。日程が動きやすいイベントに出るなら、出店の打診が来た段階で管轄の警察署に一報を入れておくのが、いちばん落ち着いて準備できる進め方です。
様式の入手方法、記載の細かな作法、複数日・複数会場の扱い、添付書類の要否は、都道府県や管轄の警察署によって運用が異なることがあります。届出の前に、必ず出店先を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)へ最新の取り扱いをご確認ください。
催事やフリーマーケットは、実店舗を持たない方でもお客様と直接向き合える貴重な機会です。だからこそ、3日前という一手間を先に済ませて、当日は接客だけに集中できる状態をつくっておきましょう。営業所の外での取引全体の考え方はURL届出と行商のページで、許可取得の全体像は取り方の全体ガイドでご案内しています。