最終更新:2026-08-23

📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。

「許可を取るのに時間がかかるから、あなたの許可で仕入れさせてほしい」「うちの名前で出していいから、実務はそちらでやって」——古物の世界で、実際に持ちかけられる話です。

これは名義貸しで、古物営業法が正面から禁じています。そして罰は無許可営業とまったく同じ重さです。さらに——罰金で済んでも、許可を失って5年間取り直せません。そこがこの記事の一点です。

条文は一行です

古物商又は古物市場主は、自己の名義をもつて、他人にその古物営業を営ませてはならない。
(古物営業法 第9条/名義貸しの禁止)

短い条文ですが、禁じているのは「自分の名義で、他人に営ませること」です。報酬を取ったかどうか、書面があるかどうかは書かれていません。

罰は、無許可営業と同じ最上位です

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
 一 第三条の規定に違反して許可を受けないで……営業を営んだ者
 二 偽りその他不正の手段により……許可を受けた
 三 第九条の規定に違反した者
 四 第二十四条の規定による公安委員会の命令に違反した者
(古物営業法 第31条)

名義貸しは第3号です。無許可営業(第1号)と同じ枠に入っています。古物営業法でいちばん重い罰条です。

第4号にも注目してください。「第24条の規定による公安委員会の命令」=営業停止命令です。これを破ると3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。一方、差止め(法21条)の命令違反は6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(法33条5号)です。同じ「命令違反」でも、どの命令かで6倍違います。処分の段階は立入りから営業停止までに整理しました。

罰金で済んでも、許可を失って5年取り直せません

ここがいちばん誤解されるところです。「罰金なら前科がついても許可は残る」——名義貸しでは、そうなりません。

二 拘禁刑以上の刑に処せられ、又は第三十一条に規定する罪若しくは刑法第二百三十五条、第二百四十七条、第二百五十四条若しくは第二百五十六条第二項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなつた日から起算して五年を経過しない者
(古物営業法 第4条第2号/許可の基準)

読み方はこうです。

そして欠格事由に当たれば、公安委員会は許可を取り消すことができます(法6条1項2号)。

違反罰条罰金でも欠格か
名義貸し(法9条)法31条3号三年以下の拘禁刑
又は百万円以下の罰金
🔴 欠格になる
(法4条2号「31条に規定する罪」)
営業停止命令の違反(法24条)法31条4号
差止め命令の違反(法21条)法33条5号六月以下の拘禁刑
又は三十万円以下の罰金
罰金だけなら
欠格にならない
行商従業者証を携帯させない(法11条2項)法35条2号十万円以下の罰金

同じ「罰金」でも、どの条文の罪かで、許可が残るかどうかが変わります。金額の大小の話ではありません。欠格事由の全体は欠格事由にまとめています。

なぜ、ここまで重いのか

「書類の名前を貸しただけ」で無許可営業と同じ罰、というのは重く感じます。法律の目的を読むと、理由が見えます。

この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
(古物営業法 第1条)

この法律の仕掛けは、「誰が、いつ、誰から、何を買ったか」をたどれる状態にしておくことに集約されます。本人確認(法15条)、古物台帳(法16条)、品触れ(法19条)、差止め(法21条)、立入り(法22条)——どれも、その一点のためにあります。

名義貸しは、その出発点である「誰が」を崩します。台帳に記録される主体と、実際に取引している人が違う状態になるからです。個別の義務を破るのではなく、追跡の仕組みそのものが働かなくなる。だから、無許可営業と同じ枠に置かれているのだと読めます。

法人なら、会社にも罰金が来ます

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人等が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第三十一条から第三十五条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
(古物営業法 第38条/両罰規定)

第31条は範囲に入っています。役員が名義を貸せば、本人に加えて法人にも100万円以下の罰金が科され得ます。条文は「法人若しくは」なので、個人事業主も同じです。

さらに、第31条は併科の対象です。「第三十一条から第三十三条までの罪を犯した者には、情状により、各本条の拘禁刑及び罰金を併科することができる」(法36条)。条文は「拘禁刑又は罰金」ですが、両方が科され得ます。一方、行商従業者証や立入り拒否の第35条は、併科の範囲に入っていません。

名義を借りた側は、無許可営業になります

貸した側が法9条違反なら、借りた側はどうなるか。許可を受けずに古物営業を営んだ者ですから、法31条第1号——無許可営業です。

どちらも同じ第31条。三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金です。「貸したほうが軽い」ということはありません。無許可営業そのものについては無許可営業の罰則で扱っています。

「管理者を置く」ことと「名義を貸す」ことは別です

混同されやすいので、条文で分けておきます。

古物商又は古物市場主は、営業所又は古物市場ごとに、当該営業所又は古物市場に係る業務を適正に実施するための責任者として、管理者一人を選任しなければならない。
(古物営業法 第13条第1項)

管理者は、法律が置くことを義務づけている役職です。自分以外の人を管理者にすること自体は、まったく問題ありません。営業しているのが許可を受けた本人(法人)であるかどうかが、名義貸しとの分かれ目です。

なお管理者になれない人も条文にあります——未成年者法4条1号から7号までに当たる者、心身の故障により業務を適正に実施できない者として国家公安委員会規則で定めるもの(法13条2項)。

🔴 「どこからが名義貸しか」の線引きは、条文には書かれていません。第9条は「自己の名義をもつて、他人にその古物営業を営ませてはならない」とあるだけです。仕入れの資金は誰が出しているか、売上は誰に入るか、誰が判断しているか——実態で判断されます。本記事では、条文に書かれていない基準を推測して示すことはしません。迷う形になっているなら、動く前に営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)へご確認ください。

誘われたときに確かめること

本記事は条文の構造を整理した一般的な情報提供であり、個別の事案が名義貸しに当たるかどうかの判断を示すものではありません。具体的な取引の形について判断が必要な場合は、営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)、または弁護士・行政書士にご相談ください。

参照した一次情報

自分の名前で、正しく始める

許可は要件を満たしていれば取れます。名義を借りる理由がなくなるのがいちばんの対策です。

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