最終更新:2026-08-23

📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。

古物営業法の「怖い話」は、たいてい罰則の話です。けれど実際に商売が止まるのは、罰金ではなく行政処分のほうです。営業停止は最長6か月。許可の取消しなら、そこで終わりです。

そして、あまり知られていないことが2つあります。営業停止の聴聞は「公開」で、期日と場所が公示されます。そして連絡が取れないと、聴聞なしで許可を取り消せる条文があります。順に見ていきます。

段階が4つあり、動く主体が途中で変わります

段階主体条文中身
① 立入り・検査・質問警察職員法22条1項・2項営業時間中に営業所・保管場所・古物市場・競り売りの場所へ
② 報告を求める警察本部長等法22条3項盗品等に関し、必要な報告を求める
③ 指示公安委員会法23条業務の適正な実施を確保するため必要な措置をとるべきこと
④ 営業停止・許可の取消し法24条6月を超えない範囲の全部または一部停止/取消し

①②は警察、③④は公安委員会です。「警察署から営業停止を言い渡される」ことはありません。処分を出すのは公安委員会です。差止め(法21条)が警察本部長等であることとあわせて、差止め(保管命令)が来たらにも整理しています。

立入りは営業時間中。証票の提示があります

1 警察職員は、必要があると認めるときは、営業時間中において、古物商の営業所若しくは仮設店舗、古物の保管場所、古物市場又は第十条第一項の競り売りの場所に立ち入り、古物及び帳簿等を検査し、関係者に質問することができる。
2 前項の場合においては、警察職員は、その身分を証明する証票を携帯し、関係者に、これを提示しなければならない。
(古物営業法 第22条)

対象は営業所だけではありません。古物の保管場所、古物市場、競り売りの場所も入ります。倉庫を別に借りているなら、そこも対象です。

拒んだ場合と、報告をしなかった場合には、それぞれ罰則があります。

次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
 三 第二十二条第一項の規定による立入り又は帳簿等の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
 四 第二十二条第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
(古物営業法 第35条第3号・第4号)

「拒み、妨げ、又は忌避」の3つが並んでいます。正面から断らなくても、居留守や引き延ばしで応じないことは「忌避」に当たり得ます。

指示(法23条)── 要件は「おそれ」です

指示は、いきなり営業を止めるものではありません。「必要な措置をとるべきこと」を求める処分です。

要件は、古物商・古物市場主・その代理人等が法令に違反した場合で、盗品等の売買等の防止または速やかな発見が阻害される「おそれ」があると認めるとき(法23条1項)。実害が出ていなくても、おそれで足ります。

ここでも「これらの代理人等」が要件に入っています。従業者がやったことが、古物商への処分の理由になります。この点は行商従業者証でも触れました。

営業停止・許可の取消し(法24条)── 要件は2つ並んでいます

……盗品等の売買等の防止若しくは盗品等の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき又は古物商若しくは古物市場主がこの法律に基づく処分に違反したときは、……公安委員会は、……その古物営業の許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて、その古物営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
(古物営業法 第24条第1項)

指示(法23条)が「おそれ」なのに対し、こちらは「著しく」が入ります。段階が上がっています。

そして後半、「この法律に基づく処分に違反したとき」は独立した要件です。差止め(法21条)や指示(法23条)に従わなければ、「著しいおそれ」を認定してもらうまでもなく、この要件に当たります。

営業停止の聴聞は「公開」で、期日が公示されます

ここがいちばん知られていないところだと思います。

1 公安委員会は、前条の規定により古物商又は古物市場主の営業の停止を命じようとするときは、行政手続法第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
2 前条の規定による処分に係る聴聞を行うに当たつては、その期日の一週間前までに、行政手続法第十五条第一項の規定による通知をし、かつ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
3 前条の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
(古物営業法 第25条)

読み解くと、3つのことが書いてあります。

これは「守られている」と「知られる」が同時に来る仕組みです。反論の場は手厚く用意されている一方で、営業停止に至る手前の段階で、期日が公示され、審理が公開されます。取引先や同業者の目に触れる可能性がある、ということです。

許可の取消しには、もう1本の条文があります

取消しは法24条だけではありません。法6条にも、別ルートの取消しがあります。

公安委員会は、第三条の規定による許可を受けた者について、次に掲げるいずれかの事実が判明したときは、その許可を取り消すことができる。
 一 偽りその他不正の手段により許可を受けたこと。
 二 第四条各号(第十号を除く。)に掲げる者のいずれかに該当していること。
 三 許可を受けてから六月以内に営業を開始せず、又は引き続き六月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないこと。
(古物営業法 第6条第1項)

第三号が、いわゆる「6か月ルール」です。違反をしていなくても、動いていなければ取り消され得ます。第二号の欠格事由は欠格事由にまとめています。

🔴 所在が分からないときは、聴聞がありません

2 公安委員会は、……許可を受けた者の営業所若しくは古物市場の所在地を確知できないとき、又は当該者の所在を確知できないときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該者から申出がないときは、その許可を取り消すことができる。
3 前項の規定による処分については、行政手続法第三章の規定は、適用しない。
(古物営業法 第6条第2項・第3項)

行政手続法第三章は「不利益処分」の章です。聴聞も弁明の機会も、そこに書かれています。それを適用しない、と条文が明言しています。

つまり連絡が取れない状態のまま公告から30日が過ぎれば、聴聞を経ずに許可が消えます。営業所を移したのに変更届を出していない、郵便が届かない——そういう状態が危ないということです。変更届の期限は有効期限・変更届にまとめています。

罰則と行政処分は、別に来ます

同じ行為で、罰則と処分の両方が動きます。そして罰則のほうには両罰規定があります。

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人等が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第三十一条から第三十五条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
(古物営業法 第38条)

「法人若しくは人」なので、個人事業主も対象です。立入りを拒んだのが従業者でも、罰金は事業主にも来ます。

実務で押さえること

立入りの頻度、指示や営業停止の運用の基準(処分量定)は、都道府県によって公表の仕方が異なります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事案の見通しを示すものではありません。実際に立入りや通知を受けたら、営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)へご確認ください。処分に不服がある場合は、弁護士や行政書士にご相談ください。

参照した一次情報

許可を取ったあとに続く義務を、まとめて確認する

行政処分の手前にあるのは、標識・台帳・本人確認・品触れ・変更届といった日々の義務です。

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