最終更新:2026-07-30
📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。
「オークション形式で売るなら届出が必要と聞いたけれど、ヤフオク!に出品するのもそうなの?」——このご質問をよくいただきます。結論から申し上げると、ヤフオク!やメルカリのような他社のサービスに出品するだけなら、競り売りの届出は必要ありません。必要になるのは、自分が競り売りの場を用意する場合です。ここを取り違えると、不要な届出に走ったり、逆に必要な届出を落としたりしてしまいます。順を追って整理していきましょう。
ヤフオク!・メルカリに出品するだけなら届出は不要です
古物営業法第10条は、古物商が競り売りをしようとするときに、あらかじめ公安委員会へ届け出ることを求めています。ただしインターネットについては、警察庁の解釈運用基準に明確な整理があります。
古物競りあっせん業者が行うあっせんを受けて、インターネット・オークションに出品する場合は、届出を要しないとされています。
ヤフオク!のようなオークションサイトの運営会社は、「古物競りあっせん業者」として自ら公安委員会に届出をしています。競り売りの場を用意しているのは運営会社側であり、出品者は用意された場に品物を出しているだけ——という整理です。ですから、一出品者として出品する古物商には、競り売りの届出義務は生じません。
この運営会社側の制度——古物競りあっせん業者の届出は、許可ではなく届出で、しかも営業開始の日から2週間以内(法10条の2第1項)。出さなければ二十万円以下の罰金(法34条3号)です。確認と記録は努力義務で、義務は盗品等の疑いの申告だけ——という作りになっています。運営側の全体像は古物競りあっせん業者にまとめました。
では、どんなときに必要になるのでしょうか。次の2つの型です。
届出が必要な2つの型と、届出先が違う理由
| 会場などで行う型 | インターネットを利用する型 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 第10条第1項 | 第10条第3項 |
| どんな場合 | 自分で会場を用意し、参加者を集めて競り売りをする(古物市場主が経営する古物市場以外の場所) | 自分のウェブサイトなどに古物を掲載し、参加者が互いの提示額を見ながら競り上げる方式で行う |
| 届出先 | 競り売りをする場所を管轄する警察署 | その古物を取り扱う営業所の所在地を管轄する警察署 |
| 様式 | 施行規則 別記様式第10号 | 施行規則 別記様式第10号の2 |
| 主な届出事項 | 競り売りの日時・場所、取り扱う古物の数量など | URL(送信元を識別する符号)、競り売りをしようとする期間など |
| 期限 | 競り売りを行おうとする日の3日前まで | |
| 手数料 | かかりません(添付書類も原則不要) | |
届出先が違うところが、いちばんの注意点です。会場で行う型は「その会場を管轄する署」、ネットの型は「営業所を管轄する署」。ネットの競り売りには物理的な会場がないため、古物を取り扱う営業所を基準にしているわけです。ここを間違えると出し直しになります。
なお、その都道府県に営業所がない場合は、営業所の所在地を管轄する公安委員会を経由して届け出ることができます(第10条第2項)。県外で1回だけ競り売りをする、というときに使える仕組みです。
そもそも「競り売り」とは何を指しますか?
言葉のイメージだけで判断すると外しやすいところです。警察庁の解釈運用基準では、競り売りは次のように説明されています。
多数の人に対して、お互いの提示条件を知ることができる状態で買受けの申出をさせ、最も有利な価格で買受けを申し入れた者を決定する取引方法
ポイントは「お互いの提示条件を知ることができる状態」という一点です。ここから、次のような線引きが出てきます。
| 形態 | 競り売りか | 理由 |
|---|---|---|
| 会場で値を競り上げていく | ✅ 該当 | 典型的な競り売り |
| 売り手が値を下げながら買い手を探す(たたき売り) | ✅ 該当 | 解釈運用基準に明記されています |
| 自分のサイトで、参加者が互いの提示額を見ながら競り上げる | ✅ 該当 | ネットの型(第10条第3項) |
| 投入箱に金額を書いて入れてもらい、後で開けて決める | ❌ 該当しない | お互いの提示条件を知ることができないため |
| ヤフオク!など、あっせん業者のサービスに出品する | ❌ 届出不要 | あっせんを受けて出品する場合は届出を要しないとされています |
たたき売りも競り売りに含まれるという点は、意外に思われるかもしれません。値を上げるか下げるかではなく、「多数の相手に互いの条件を見せながら競わせて相手を決める」という構造が判断の軸になっています。
ネットの型は「期間」を届け出ます(6月が上限の運用)
ネットの型では、届出事項に「競り売りをしようとする期間」が入ります。開催日1日だけを届け出るのではなく、いつからいつまで行うかを届け出る形です。
そしてこの期間について、警察庁の解釈運用基準は6月を上限とするよう指導するとしています。つまり、ネットオークションを自分のサイトで継続的に運営するのであれば、半年ごとに期間を区切って届け出直すという運用になります。「一度出せば以後ずっと有効」ではありませんので、更新の時期をカレンダーに入れておいてください。
あわせて、自分のサイトで古物を取引するならURLの届出と、そのURLを使う権限を示す使用権限疎明資料も必要になります。こちらは許可申請や変更届出の話で、競り売りの届出とは別の手続きです。詳しくはURL届出と行商のページでご案内しています。
古物市場での競りには、届出は要りません
第10条第1項は「古物市場主の経営する古物市場以外において競り売りをしようとするとき」と書かれています。つまり、同業者が集まる古物市場に参加して競りに加わる場合、参加する側の古物商が競り売りの届出をする必要はありません。市場の運営は古物市場主の許可のもとで行われているためです。
ただし、古物市場に参加するには許可に「行商する」の記載が必要です。市場は営業所以外の場所での取引にあたるためです。仕入れの場として古物市場を使う予定なら、申請の段階で忘れずに選んでおきましょう。仕入れルートの考え方は仕入れ戦略のページで整理しています。
自分が「場」を提供する側なら、別の届出です
ここも混同されやすいところです。自分が古物商どうしを取り持つオークションサイトを運営する側になるのであれば、それは競り売りの届出ではなく、「古物競りあっせん業」の届出(第10条の2)という別の制度になります。
大事なのは、こちらは許可ではなく届出だという点です。古物商許可は公安委員会の「許可」ですが、古物競りあっせん業は営業開始後に「届出」をする仕組みで、審査を経て与えられるものではありません。混同して「許可が下りるまで待つ」と考えてしまうと段取りを誤ります。
届出をしないとどうなりますか?
古物営業法第34条第2号に、第10条第1項または第3項の規定に違反して届出をせず、または虚偽の届出をした者は20万円以下の罰金と定められています。
届出は手数料無料、書類1枚、添付書類も原則不要です。3日前という期限だけを守れば済む手続きですので、競り売りをやると決めた時点で管轄の警察署に連絡してしまうのが早いです。窓口は生活安全課(防犯係)です。
様式の入手方法、記載の作法、届出事項の細かな範囲、複数回にわたる競り売りの扱いは、都道府県や管轄の警察署によって運用が異なることがあります。また、ある取引形態が競り売りに当たるかどうかの最終的な判断も管轄によります。届出の前に、必ず営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)へご確認ください。
競り売りの届出は、「その場を自分が用意するのか、他社のサービスに乗るのか」で必要かどうかが決まり、「会場でやるのか、ネットでやるのか」で届出先と様式が決まります。この2つの分岐だけ押さえておけば迷いません。許可取得の全体像をあらためて確認したい方は取り方の全体ガイドを、許可後にやることの一覧は許可後の実務をあわせてご覧ください。