最終更新:2026-08-01
📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。
ある日、警察から「品触れ(しなぶれ)」という書面が届く。古物商をやっていれば、いずれ必ず出会う手続きです。ところがこれを「読んで終わり」にしてしまう人が少なくありません。品触れには、受け取ったあとに必ずやることが決まっていて、しかも期限が「6か月」と「直ちに」の2種類あります。ここを取り違えると、気づかないうちに義務違反の状態になります。
この記事では、品触れが届いてから終わるまでを、時系列で整理します。
品触れとは、警察から届く「盗品の手配書」です
古物営業法第19条第1項は、警視総監・道府県警察本部長・警察署長(あわせて「警察本部長等」といいます)が、必要があると認めるときに、古物商や古物市場主に対して盗品等の品触れを発することができると定めています。ざっくり言えば、「こういう品物が盗まれた。もし持っていたり、持ち込まれたりしたら知らせてほしい」という通知です。
ここでいう「盗品等」=「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によつて領得された物」とは、警察庁の解釈運用基準によれば、刑法第2編第36章から第39章までの犯罪の構成要件に該当する行為によって領得された物を指します。
つまり、対象は窃盗だけに限られません。この範囲の広さが、実務でときどき誤解される点です。なお、品触れの「盗品等」と、申告義務(法15条3項)の「不正品」と、無償回復(法20条)の「盗品」は、それぞれ範囲が違います——3つの違いは別記事で表にまとめました。「うちは盗品なんて扱わない」と思っていても、品触れ自体は古物商であれば誰にでも届き得るものだと考えておいてください。
受け取ったら、まずやることは2つ
品触れを受けたときの義務は、古物営業法第19条第2項に書かれています。①到達の日付を記載する ②その日から6か月間保存する——この2つです。
| 書面で届いた品触れ | 電磁的方法で届いた品触れ | |
|---|---|---|
| 到達の日付 | 書面に記載する | 記録する義務は定められていない |
| 保存期間 | 受けた日から6か月間 | |
| 根拠 | 古物営業法第19条第2項(ただし書)/警察庁の解釈運用基準 | |
電磁的方法(情報通信の技術を活用する方法)による品触れについて、到達の日付を記録する義務は定められていません。これは古物営業法第19条第2項のただし書に定められている点で(警察庁の解釈運用基準も同じ整理をしています)、書面の場合との数少ない違いです。ただし、要らないのは「日付の記載」だけです。6か月間保存する義務そのものは、電磁的方法で届いた品触れでも変わりません。なお電磁的方法で発するには、あらかじめ古物商・古物市場主側の承諾が必要とされています。承諾していなければ、届くのは書面です。
ここで実務上気をつけたいのは、「到達の日付」は届いた日であって、品触れに書かれた日付ではないということです。郵便で数日かかっていれば、その分だけ6か月の起算点も後ろにずれます。受け取ったその場で日付を入れてしまうのがいちばん安全です。
「直ちに届け出る」のは、2つの場面
保存しておくだけでは終わりません。品触れに相当する古物と出会ってしまったときには、直ちに警察官へ届け出る義務があります。届出が必要になる場面は、立場によって次のように分かれます。
| 立場 | 届け出が必要になるとき | 根拠 |
|---|---|---|
| 古物商 | 品触れを受けた日にその古物をすでに所持していたとき/保存期間(6か月)内に品触れに相当する古物を受け取ったとき | 第19条第3項 |
| 古物市場主 | 保存期間(6か月)内に、品触れに相当する古物が取引のため古物市場に出たとき | 第19条第4項 |
見落としやすいのは、古物商の「受けた日にすでに持っていた」ケースです。品触れは、これから持ち込まれるものだけを対象にしているわけではありません。届いた時点で在庫にあるものも対象になります。品触れが届いたら、まず自分の在庫を確認する——この順番を習慣にしておくと取りこぼしません。
また、条文は「直ちに」と書いています。「次の定期報告のときに」ではありません。該当しそうなものが見つかった時点で、品触れを発した警察署に連絡するのが実務です。
6か月を過ぎたら、どう扱うか
保存義務の期間は、品触れを受けた日から6か月です。この期間を過ぎれば、その品触書を保存し続ける法律上の義務はなくなります。ただし古物商の帳簿類(取引の記録)とは別の書類である点に注意してください。品触れの保存期間が終わっても、帳簿の保存義務は別に続きます。混同して一緒に処分してしまうと、帳簿のほうで問題になります。台帳まわりの扱いは古物台帳とプレート(標識)のページで整理しています。
実務では、品触れを受けた日付順にファイル1冊にまとめておくのが管理しやすい方法です。到達日を記載していれば、6か月を過ぎたものから順に整理できます。立入りの際に「保存しています」と示せる形になっていることが大事です。
罰則と、2025年に変わったこと
品触れの保存義務や届出義務に違反した場合、罰則の対象になります。「読んで捨てた」「在庫を確認しなかった」で済む話ではありません。
| 違反する義務 | 罰則の条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 到達の日付を記載しない/虚偽の日付を記載する/6か月間保存しない(第19条第2項) | 第33条第4号 | 六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金 |
| 該当する古物を所持していた・受け取ったのに届け出ない(第19条第3項) 古物市場に出たのに届け出ない(第19条第4項) | 第33条第1号 | 六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金 |
| 過失により上の届出をしなかったとき(第19条第3項・第4項) | 第37条 | 拘留又は科料 |
3行目に注目してください。古物営業法は、品触れの届出義務について「過失により」違反した場合の罰則を、わざわざ別の条文で置いています(第37条)。在庫の確認を忘れていた、届出をうっかり失念した——そうした場合も処罰の対象になり得る建て付けです。「わざとではないから大丈夫」が通らない、数少ない義務のひとつだと考えてください。だからこそ、品触れが届いたその場で在庫を確認することが実務上いちばん効きます。
ここで、古い解説記事を読むときの注意点があります。法務省の公表によれば、令和7年(2025年)6月1日に懲役及び禁錮が廃止され、新たな刑として拘禁刑が創設されました。それ以前に書かれた解説書やウェブ記事は法定刑を「懲役」と書いています。都道府県警察が公開している手引きでも、改訂されていないものは「懲役」のままです。上の表は現行の条文にもとづく表記です。
なお、品触れは許可の要否や更新とは無関係に、許可を持っている間ずっと続く義務です。営業が小規模でも、ネット中心でも、届いたときの対応は変わりません。許可を取ったあとに何が待っているかの全体像は許可後の実務にまとめています。競り売りをする場合の届出とあわせて押さえておくと、競り売りの届出と品触れは別の手続きだと整理できます。
品触れの様式、発せられる範囲、電磁的方法による場合の承諾の取り方などは、都道府県や管轄の警察署によって運用が異なることがあります。また、手元の古物が品触れに相当するかどうかの最終的な判断も管轄によります。迷ったら自分で決めず、営業所を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)へご確認ください。