最終更新:2026-09-01
📚 この記事は、警察庁・各都道府県警察・e-Govの法令など公的な一次情報にもとづき、航路編集部が内容を確認しています。
古物商の義務の中で、いちばん毎日出てくるのが相手方の確認(本人確認)です。時計・貴金属など品目ごとの記事で何度も触れてきましたが、このページでは「何を・いつ・どうやって確認するのか」を、品目に関係なく条文から整理します。
先に結論をひとつ。🔴 ネット買取で「免許証の画像を送ってもらうだけ」「住民票のコピーを送ってもらうだけ」は、法令のどの方法にも当たりません。警視庁も「免許証等のコピーや住民票の写しを送ってもらうだけでは違反です」と明言しています。
いつ確認するのか——「買い受けるとき」です
古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、次の各号のいずれかに掲げる措置をとらなければならない。
(古物営業法 第15条第1項 柱書)
対象は受け取る側の場面——買取り・交換・委託で品物を受けようとするときです。お客さんに売るだけの場面は、この確認義務の対象ではありません(ただし帳簿への記録は、受取りだけでなく引渡しにもかかる場合があります。法16条)。
確認する中身は「住所・氏名・職業・年齢」の4点セットです(同項1号)。⭕ 職業は運転免許証にもマイナンバーカードにも載っていません。だから証明書を見て終わりではなく、職業まで含めて確かめる(申し出てもらう)ところまでが確認です。
確認しなくてよい場合は2つだけ
- 対価の総額が1万円未満の取引(法15条2項1号・規則16条1項)——ただし、すぐ下の例外7品目を除きます。
- 自分が売却した物品を、その売却の相手方から買い受ける場合(法15条2項2号)——いわゆる買い戻しです。
例外7品目は、盗難が多いなどの理由で1万円未満でも確認が必要とされているものです(規則16条2項)。
| 号 | 1万円未満でも本人確認が必要な古物(規則16条2項) |
|---|---|
| 一 | 自動二輪車・原動機付自転車(ねじ・ボルト等の汎用部品を除く部分品を含む) |
| 二 | エアコンディショナーの室外ユニット、電気温水機器のヒートポンプ |
| 三 | 家庭用コンピュータゲームのソフト |
| 四 | 光学的方法により音・影像を記録した物(CD・DVD・Blu-ray など) |
| 五 | 電線 |
| 六 | グレーチング(金属製のものに限る) |
| 七 | 書籍 |
五号・六号は、金属盗対策として令和7年10月1日施行の改正で追加されたものです。経緯は改正まとめに、台帳側の例外品目との違いは古物台帳とプレートにまとめています。
対面のとき——条文の措置は4つ
法15条1項が挙げる措置は次の4つで、どれか1つをとれば足ります。
| 号 | 措置 | 実際のやり方(規則15条) |
|---|---|---|
| 1号 | 住所・氏名・職業・年齢を確認する | 身分証明書等の提示を受けるか、本人以外への問い合わせで確かめます(規則15条1項)。いちばん使われる方法です |
| 2号 | 署名のある文書の交付を受ける | 🔴 署名は古物商や従業者の面前で、万年筆・ボールペン等により明瞭に書かれたものに限ります(規則15条2項)。書いてきてもらった紙を受け取るのではダメで、疑わしいときは1号の確認まで求められます |
| 3号 | 電子署名つきの電磁的記録の提供 | 認定認証業務による電子署名が行われたもの(非対面でも使えます) |
| 4号 | 1〜3号に準ずる措置 | 国家公安委員会規則で定める13の方法——次の章の非対面メニューがこれです(規則15条3項) |
1号の「身分証明書等」は、住所・氏名と年齢(または生年月日)を証する資料で、1人に1つしか発行されないもの——運転免許証、マイナンバーカード(個人番号カード)などです(規則15条1項)。
非対面のとき——13の方法から選びます
ネット買取・宅配買取など相手と会わない取引では、規則15条3項に列挙された方法のどれかを、書かれているとおりにとる必要があります。ざっくり系統別にすると次のとおりです。
| 系統 | 号 | やること(要旨) |
|---|---|---|
| 郵送・書類 | 1号 | 印鑑登録証明書+その印鑑を押した書面の送付を受ける |
| 2号 | 本人限定受取郵便を相手に送り、到達を確かめる | |
| 3号 | 代金を本人限定受取郵便で送る契約にする | |
| 4号・5号 | 住民票の写し等・身分証明書等(またはICチップ情報・専用ソフトで撮影した画像)の送付・送信を受け、そこに書かれた住所へ転送不要の配達記録郵便を送って到達を確かめる | |
| 銀行口座とセット | 6号 | 住民票の写し等の送付を受け、その名義の口座への振込みで代金を払う契約にする |
| 7号 | 身分証明書等の写しの送付+転送不要郵便の到達+その名義の口座への振込み | |
| スマホでの本人確認 (いわゆるeKYC) | 8号 | 古物商が提供するソフトウェアで、相手の容貌と写真付き身分証明書等を撮影・送信してもらう |
| 9号 | 同じくソフトで容貌を撮影+写真付き身分証明書等のICチップ情報の送信を受ける | |
| タブレット筆記 | 10号 | 面前で、画面に明瞭に表示される器具(タブレット等)に氏名を筆記してもらう |
| 公的な電子証明書 | 11号・12号 | マイナンバーカードの署名用電子証明書(11号。署名検証者に限る)や、民間の特定認証業務の電子証明書(12号)つきの記録の提供を受ける |
| 2回目以降の相手 | 13号 | 過去に上記の確認をした相手にID・パスワード(識別符号)を発行しておき、なりすましが困難な方法で本人だと確かめる |
⚠ 各号には細かい条件がセットで付いています。たとえば5号・7号・8号(4号も画像で行う場合)は送付を受けた書類の写しや画像を台帳等と一緒に保存することが要件ですし、身分証明書等の画像は「古物商が提供するソフトウェアを使用して撮影させた」もの(厚みなどの特徴が確認できるもの)に限られ、メールで送ってもらった写真では要件を満たしません。実装するときは、必ず規則15条3項の該当号を原文で確認してください。
本人限定受取郵便の到達確認のしかた(受付番号を連絡してもらう、専用の梱包材で送ってもらう等)は、警視庁「非対面取引における確認の方法」に実務例つきで示されています。ページ末尾にリンクを置きました。
確認した方法は、台帳に書きます
帳簿等(古物台帳)の記載事項には、取引の年月日・品目・特徴・相手方に加えて、「前条第一項の規定によりとつた措置の区分」(1号・4号は区分と方法まで)が入っています(法16条5号)。つまり本人確認は「やる」だけでなく「どの方法でやったかを記録する」ところまでが1セットです。台帳の書き方は古物台帳とプレートにまとめています。
怠るとどうなるか
- 🔴 6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です(法15条1項違反=法33条1号)。拘禁刑と罰金は併科されることがあり(法36条)、法人の従業者が違反すれば法人にも罰金が科され得ます(法38条)。
- 刑罰とは別に、公安委員会の指示(法23条)や営業停止命令(法24条)の対象にもなります。段階は立入りから営業停止までで整理しています。
- 盗品の処分先として使われれば、被害品の返還などで古物商自身が損をすることにもなります。確認義務は、自分の店を守る仕組みでもあります。
なお、確認の結果にかかわらず、品物に不正品の疑いがあるときは警察官への申告義務が同じ15条の3項にあります。こちらは盗品かもと思ったらで扱いました。
犯収法の本人確認とは別物です
貴金属等の買取りでは、200万円を超える現金取引で犯罪収益移転防止法の取引時確認が別にかかります。古物営業法の確認をしたから犯収法も済み、とはなりません。詳しくは金・貴金属の買取りで解説しています。
⚠ 法令の確認とあわせて求められることもあります。たとえば警視庁は、1万円未満の取引でも18歳未満の者からの買受けでないことの確認(メールやメッセージ機能等での確認)を案内しています。年少者からの買受けをめぐる取扱いは地域によって異なりますので、営業所を管轄する警察署(生活安全課)で、地元のルールを必ず確認してください。本記事は法令にもとづく一般的な情報提供であり、個別の取引の適法性を保証するものではありません。
参照した一次情報
- e-Gov法令検索「古物営業法」(昭和24年法律第108号)(第15条 確認等及び申告/第16条 帳簿等への記載等/第33条・第36条・第38条 罰則)
- e-Gov法令検索「古物営業法施行規則」(平成7年国家公安委員会規則第10号)(第15条 確認の方法等/第16条 確認等の義務を免除する古物等)
- 警視庁「非対面取引における確認の方法」(各号の実務例・到達確認の方法)
- 警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」令和8年5月14日付け警察庁丙生企発第51号(PDF)